NIPTには落とし穴があるってほんと?

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疑問に感じているこうのすけ

ねぇねぇ、ぷぅ先生。

クリフムには「NIPTを受けてきました」っていう妊婦さんがよく来てるけど、なんかちょっと心配そうな顔してる人もいるよね。

「そうね。NIPTは非侵襲的な検査(スクリーニング検査)と言われていて、ママの血液で調べるから手軽に受けられるのがメリットだと思うわ。
でも、NIPTを『診断』と勘違いして過信してしまうと、思わぬ落とし穴があるの」

えっ!?
NIPTで「陰性」って結果が出たら、それで安心できるんじゃないの?

「そう思うわよね。
NIPTでわかるのは、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトゥ症候群)などの特定の染色体数の異常だけなの。
実際には何百種類もの染色体異常があるし、赤ちゃんの病気には染色体異常がない形態の異常とかもあって、NIPTではわからないものもたくさんあるのよ」

驚いているこうのすけ

染色体異常って、そんなにたくさん種類があるんだ…!

じゃあ、NIPTで「陰性」って出ても、ほかの病気が見つかるかもしれないってこと?

「その通り。
NIPTはあくまでスクリーニング検査だから、結果が『陰性』でも100%大丈夫とは言い切れないの。
逆に『陽性』だったとしても、それは『陽性の疑いがある』っていう意味だから、最終的には絨毛検査や羊水検査で診断を確定する必要があるのよ。
だから、『NIPTだけですべての異常や病気がわかる』と思い込まないことが重要なの」

気付いたこうのすけ

「NIPTを受けたから安心だ」って、単純には言えないんだね。

そういえばこの前、待合室でお話していた妊婦さんが「赤ちゃんの首にむくみがあるって言われて不安で、とりあえずNIPTを受けました」ってお話していたの。

これももしかして、落とし穴だったのかな…。

「こうのすけ、いいところに気がついたわね。
その「むくみ」、医学的には「NT(Nuchal Translucency)」と言って、すべての赤ちゃんにあるものなの。
ただ、首の後ろのむくみが厚くなると、染色体異常があったり、他の病気のサインだったりすることがあるのよ。
だからまずNIPTを受けたのだと思うのだけれど、それがズバリ落とし穴。妊婦さんにとって、不安な時間が長引く非効率な選択肢なの」

やっぱり、そうだったんだ…。

「むくみの厚さが目立つ場合は、最初から絨毛検査や羊水検査といった確定診断に進むほうが、早くはっきりとした答えが得られるのよ。
国際出生前診断学会(ISPD)も、2023年6月に「NTが分厚い、もしくは超音波検査で何らかの異常が認められたときは、NIPTを選択するのではなく、確定検査(絨毛検査や羊水検査)に進むべきだ」という見解声明(※)を発表しているから。

疑問を感じているこうのすけ

えっ??

そうなの?どうして?

「NIPTだけでは診断できないから、陽性が出たら羊水検査を受けられる時期まで待たないといけないの。NIPTを受けてから2ヶ月くらい、妊婦さんは不安と闘って、苦しい思いを抱えないといけないくなる。
NIPTで陰性だったとしても、どうしてむくみが分厚いのか、他の検査をしないと結果がわからないでしょう。
他の染色体異常とか遺伝子の病気とか、心臓病とか、そういう可能性が出てくることを考えると「NIPTは何のために受けたの?」って思うはずなの。
それに、わたしの経験では、NIPTが陰性だったけどむくみがあったという人で、結局トリソミーだったという人もいたわ。
だから、むくみが分厚い時はNIPTではなく絨毛検査や羊水検査を受けるのが、一番いいと思う」

笑顔のこうのすけ

結果を待っている間って、どんどん不安になっちゃうよね。

だったら、1日でも早く診断してもらえる検査を受けたほうが、必要な準備ができると思う。

最近の妊婦さんは自分でいろいろ調べているから、調べていくうちに、かえって混乱することもありそうだね…。

「そうね。皆さんとても情報に敏感で、真剣に赤ちゃんのことを考えているのが伝わってくるわ。
でも、だからこそ、正しい順番で検査を受けることがすごく大事よ。
まずは精密な超音波で赤ちゃんの状態をよく観察して、必要があればNIPTを選ぶ。それが合理的な順番だと思うわ。

話しているこうのすけ

わかった。ぼくもちゃんと覚えておくね。

今日もすごくわかりやすかったよ!ありがとう、ぷぅ先生。

【参考サイト・参考文献】

※Wiley Online Library「Position statement from the International Society for Prenatal Diagnosis on the use of non‐invasive prenatal testing for the detection of fetal chromosomal conditions in singleton pregnancies」
[PDF]https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/pd.6357

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