妊娠11週と妊娠12週の違い
Column
出生前診断を受けるにあたって、さまざまな疑問や不安が頭をよぎるのではないでしょうか。こちらの記事では、Dr.ぷぅが妊娠中や出生前診断で気になること、あるいは心配なことをわかりやすく解説しています。
妊娠初期精密超音波検査(初期胎児ドック)は、一般に妊娠11週0日から13週6日ごろに行われます。国際産婦人科超音波学会(ISUOG)のガイドラインでも、この時期の精密超音波検査が推奨されています。実施の時期は施設によって異なり、12〜13週での受診を案内する施設もあります。
クリフムでは、胎児の大きさなどの条件が整えば、妊娠11週から初期胎児ドックを行っています。近年、11週前半で受診される方が増えてきました。
妊娠11週の初期胎児ドックで診ること
妊娠11週の赤ちゃんは4〜5cm程度と小さく、詳しく観察するには相応の機器と技術が必要です。クリフムでは、高解像度の2D超音波とカラードプラを基本とし、お腹の上からの超音波(経腹エコー)と、お母さんの腟のほうからの超音波(経腟エコー)を同じ検査台の上で組み合わせて行っています。脳については、経腟からの高周波プローブと3D超音波を用いて、この時期に評価できる範囲での観察を行っています。この段階でも、Joubert症候群(※)のような特定の遺伝子変異にともなう脳の形態異常が見つかることがあります。
この方法で、11週の段階で評価できる脳、心臓、顔面、手足などの主要な構造を、系統的に確認します。NT(うなじのむくみ)の計測、鼻骨や顎の発達、耳の位置、へその緒の血流なども含め、決まった手順に沿って観察を進めていきます。また、必要に応じて特定の遺伝性疾患のスクリーニングも行っています。
クリフムの院長は1998年より妊娠初期の胎児診断に取り組んでおり、これまでに胎児超音波診断101,013例、絨毛検査19,878例(2026年6月末現在)を行っています。
※ Joubert症候群:小脳や脳幹の形成に関わる遺伝子の変異により、特徴的な脳の構造異常がみられる疾患です(詳細な研究論文はこちら)。
妊娠11週の検査でわかること・わからないこと
大切なことですが、11週の検査ですべての病気を否定できるわけではありません。赤ちゃんの姿勢や発育の状況によっては、その日には十分に観察できず、後日の再検査が必要になることがあります。
また、腹壁やへその緒の付着部、膀胱、脊椎などは、12週以降のほうが評価しやすい構造です。脳についても、この時期に確認できることと、赤ちゃんの発達が進んでから確認できることがあり、詳細な評価は妊娠中期以降に行います。心臓についても、初期の検査で異常が見られなくても、その後の経過で明らかになる病気があります。そのため、初期胎児ドックを受けられた方にも、妊娠中期の精密超音波検査を受けていただくことが大切です。
初期胎児ドックは、妊娠中期以降の検査に置き換わるものではなく、早い時期に得られる情報を、必要な方にできるだけ早くお届けするためのものです。
必要な場合には、同日に絨毛検査へ
超音波検査の結果によっては、ご希望とご相談のうえで、同じ日に絨毛検査(CVS)を実施することが可能です。クリフムでは、超音波検査から絨毛検査、遺伝学的検査、そして遺伝カウンセリングまでを一貫して行える体制を整えています。
絨毛検査では、ダウン症などのトリソミーに関する迅速検査の結果を、翌日にお伝えできます。染色体の詳細な解析(D-karyo® HD)の結果は3〜7日、遺伝子検査の最終結果は5〜10日でのお伝えとなります。何をいつお伝えできるかは、事前の遺伝カウンセリングで具体的にご説明します。
早く知ることの意味
出生前診断は、赤ちゃんの状態をできるだけ早く正確に把握し、これからのことを落ち着いて考えるためのものです。検査を受けること自体が、何らかの決断を強いるものではありません。そして多くの場合、検査の結果は「問題ありません」という安心につながります。
万が一、赤ちゃんに病気や気になる所見が見つかった場合でも、早く正確にわかることには大きな意味があります。十分な説明を受け、必要であれば別の専門家の意見も聞き、ご本人とご家族が時間に追われずに考えることができるからです。早く知ることは、決断を急ぐためではなく、考える時間を確保するためのものです。
その先の選択は、ご家族それぞれです。赤ちゃんを産み育てていくと決められるご家族にとっても、早期の診断は、専門的な分娩や出産後の医療の準備を整え、心の準備をするための大切な時間になります。妊娠の継続を選ばれる場合も、そうでない場合も、クリフムはどのような決断であっても、ご家族に寄り添って診療にあたっています。
「妊娠11週」と「妊娠12週」で変わること
日本の法律(母体保護法)では、妊娠11週6日までと妊娠12週0日以降とで、人工妊娠中絶の方法や、必要となる行政手続きが異なります。
以下は、妊娠の継続や中断のいずれかを勧めるための説明ではありません。検査を受ける時期を考えるうえで、あらかじめ知っておいていただきたい、日本の医療上・制度上の違いです。
妊娠12週未満では、一般に吸引法などの外科的な処置が行われ、日帰りで対応できる場合があります。ただし、麻酔の方法や入院の要否は、医療機関やお母さんの状態によって異なります。
妊娠12週0日以降は、一般に子宮の入り口を準備したうえで、薬剤によって陣痛を起こし、出産に近い経過で妊娠を終了する方法がとられます。入院が必要になることが多く、原則として死産届の提出や火葬等の行政手続きも必要になります。
負担の感じ方はお一人おひとり異なりますが、処置の方法、入院の期間、必要な手続きという点で、この境目の前と後では実際に大きな違いがあります。だからこそ、「いつ受けるか」もまた、考えておいていただきたいことのひとつです。
それでも、何週で受けても
もちろん、すべての方が11週での受診に間に合うわけではありません。お仕事やご家庭の事情、妊娠に気づいた時期などによって、12週や13週での受診になる方もいらっしゃいます。何週で受診されるとしても、クリフムでは変わらず出生前診断を行っています。
ただ、11週で受けるという選択肢があること、そして12週との違いがあることを、ぜひ知っておいていただきたいのです。
妊娠11週での初期胎児ドックをご希望の方も、何週での受診をお考えの方も、どうぞお気軽にクリフムまでお問い合わせください。
初期胎児ドックの料金
| 基本検査 (赤ちゃんひとりにつき) |
49,800円(税込) ※妊娠高血圧腎症 (PE)スクリーニング検査含む |
|---|---|
| 追加精密検査料 (赤ちゃんひとりにつき) |
5,500~44,000円(税込) ※「基本検査」後、必要に応じて基本料金に加算 |
| 追加胎児脳特殊定量検査料 (赤ちゃんひとりにつき) |
11,000~27,500円(税込) ※「基本検査」後、必要に応じて基本料金に加算 |
| 結果カウンセリング | 5,500~44,000円(税込) |
※上記の基本料金に加えて、初回受付手数料:3,080円(税込)/主治医の紹介状なし:5,500円(税込)/初期ママ血清マーカー組み合わせ検査:27,500円(税込)/絨毛検査+DNA抽出:235,400円(税込)/診療情報提供書:8,800円(税込)/他施設へのコーディネート:5,500円~11,000円(税込)などの料金が必要になることがございます。
参考資料
- International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology. ISUOG Practice Guidelines (updated): performance of 11–14-week ultrasound scan. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology. 2023;61(1):127-143. https://doi.org/10.1002/uog.26106
- The Fetal Medicine Foundation. NT(後頸部透亮像)の測定基準(妊娠11週0日〜13週6日、頭殿長 CRL 45〜84mm). https://fetalmedicine.org
- Pooh RK, et al. Open isthmus and lambda (Λ) sign of early Joubert syndrome: elucidating development of molar tooth sign. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology. 2024;64(6):836-840. https://doi.org/10.1002/uog.27666
- 母体保護法(昭和23年法律第156号)
- 死産の届出に関する規程(昭和21年厚生省令第42号) ― 死産を「妊娠第4月(12週)以後における死児の出産」と定義。死産証書または死胎検案書を添えて、死産後7日以内に市町村長へ届出。
- 日本産婦人科医会 研修ノートNo.99「流産のすべて」Ⅲ-5.後期流産の処置 ― 妊娠12週以降の後期流産(死産)に係る手続き(死産届書・死産証書・死胎火葬許可証)について解説。https://www.jaog.or.jp/note/5.後期流産の処置/
公開日:2026年7月26日/最終更新日:2026年7月26日