胎児の病気について

胎児の先天性の病気のうち代表的なものを部位別に挙げています。赤ちゃんに病気がなく元気に生まれてきてくれることは大変ありがたいことですね。これらのうち胎児ドックで見つかりにくいものは耳の異常、心臓の小さい穴、小さい指異常などです。

下図の胎児の身体の部位をクリックすると各症状をご覧になれます。

下図の胎児の身体の部位をクリックすると各症状をご覧になれます。

頭部 頭部

1. 頭蓋骨の病気

無頭蓋症 頭蓋骨がうまく形成されない。妊娠初期に判明することが多い。
脳瘤 頭蓋骨の一部が形成されず、脳が頭蓋の外に出てしまう病気。
頭蓋骨早期癒合症 頭蓋骨縫合が胎児期に癒合してしまうため頭や顔面の形が変形してしまう症候群と単純性のものあり、早期癒合する頭蓋縫合により頭蓋形態が変化する。頭蓋変形は妊娠中徐々におこる。

2. 水頭症

脳室系の中で、脳脊髄液がせき止められたためにうまく流れず、脳室が大きくなっていく場合を水頭症という。水頭症ということばは状態を表しているだけで、水頭症になる原因が何かを突き止めなければならない。髄液の流れる道筋が狭窄あるいは閉鎖しているのか、脳の先天性奇形がありそのために水頭症になっているのか、また、脳室内出血や脳腫瘍、くも膜嚢胞など偶発的に起こったものの影響により水頭症となったのか、など脳内の状況をよく観察しなければならない。

3. 大脳の発達・発育の異常

全前脳胞症 大脳がうまく右と左に分離できない病気
脳梁欠損 右脳と左脳をつなぐ脳梁という繊維がない。まったく大人になるまで気づかれず予後良好のことも多い
大脳の発達異常 大脳形成がゆっくりしているために脳室が拡大したり、小頭症などになることがある。

4. 小脳・後頭蓋窩の異常

ダンディーウォーカー症候群 小脳虫部が欠損しており第四脳室が嚢胞状に後頭蓋窩内に拡大した状態。ダンディーウォーカーという名前は非常に有名だが実際にこの病気であることは稀であり、ダンディーウォーカーと診断されている中にはダンディーウォーカー症候群でないケースが多く存在している。
キアリⅡ型奇形 二分脊椎症(下述)に伴って小脳・延髄が脊柱管内にひき下ろされる。そのため髄液の流れがせき止められ二次的な水頭症を起こすことが多い
小脳低形成 小脳が全体に小さい場合、染色体異常と関連していることもある。また、小脳の一部(虫部)の低形成についてはよくわかっていない。

5. その他

くも膜嚢胞 頭蓋内のいろいろな場所に発生しうる嚢胞(水たまり)。大きいものは脳を圧迫する。妊娠中に自然に縮小するものもあり。予後は良い例が多い。
ガレン静脈瘤 血管の先天異常で脳内にできる動静脈瘻。
脳腫瘍 とても稀で、原因不明。
脳内出血 原因不明のことが多い。出血が一部であるときはその後予後良好なことも多い。
脳内石灰化病変 サイトメガロウイルスやトキソプラズマの胎内感染により見られることがある。その他原因不明の場合もある。

 


 

顔面 顔面

1. 眼の異常

眼窩狭小・眼窩離開 染色体異常や頭蓋骨早期癒合などで見られる
眼球突出 眼が出ている病気。骨の異常、頭蓋骨早期癒合などでみられる。

2. 鼻の異常

鼻骨の形成不全 鼻骨はダウン症の赤ちゃんなどで形成がうまくできないことがある。
鼻の位置異常 全前脳胞症などの病気
鼻腔異常 鼻の孔の数異常や、鼻腔の奥がのどのほうにつながっていないことがある。

3. 口唇裂 口蓋裂

もっとも多い顔面異常で多因子異常といわれる。口唇裂のみの場合と、歯茎、口蓋も割れている場合がある。

4. 下顎の異常

下顎が小さい場合、染色体異常に関係していることが多い。下顎がまったく形成されない無顎症、妊娠中に徐じょに形成される病気もある。

5. 耳の異常

外耳が低い、外耳の形の異常

 


 

心臓 心臓

1. 心室中隔欠損
2. 4つの部屋のバランスがうまく取れない異常 左室低形成、肺動脈閉鎖、両大血管右室起始症など
3. 大血管の異常 肺動脈閉鎖、両大血管右室起始症、大動脈幹症、大血管転換症など

 


 

肺

1. 胸水貯留 肺のまわりに水がたまる。自然に消える場合もある
2. 横隔膜ヘルニア 横隔膜に孔があいているため胃や腸管その他の腹部の臓器が胸郭に入り、肺が圧迫されて肺低形成になる病気
3. 先天性嚢胞性腺腫様奇形 (CCAM) 肺に嚢胞がたくさんでき、その嚢胞形成のため肺低形成になる病気。自然消失の可能性もある。

 


 

腹部腹部

1. 腹壁破裂 へその右側に穴があいていることで腹腔内の腸管やその他の臓器が外にでてしまう病気。合併症は少なく出生後の手術により予後が良いことが多い
2. 臍帯ヘルニア へその緒が出ているところに腹腔内の臓器が出ている。出ている臓器はヘルニア嚢に包まれている。合併症があることも多い。
3. 消化管閉鎖 小腸などの一部が狭窄あるいは閉鎖しているためにその上部の腸管が拡張する。
4. 卵巣嚢腫 女児の腹腔内の嚢胞性病変で一番多い。妊娠中に茎捻転を起こすこともある。自然に縮小することもある。

 


 

手足 手足

1. 四肢短縮症 100種類以上の先天性の四肢短縮が報告されている。肋骨などの形成にも異常あることがあり、肺低形成のため予後が悪い場合もある。
2. 関節の異常 手首・肘その他の関節が屈曲・拘縮することがある。
3. ゆびの異常 指の数が多いあるいは少ない異常(多指症・少指症)、指がくっついている(合指症・合趾症)病気、手足が裂けたような状態になっている場合(裂手症・裂足症)などがある。

 


 

脊椎 脊椎

1. 二分脊椎症 妊娠初期に神経管がうまく閉鎖しないことで、脊髄神経を包む膜や脊髄神経が外に露出してしまう。脊髄神経が外にでている場合を脊髄髄膜瘤という。小脳や延髄が脊柱管に引きおろされ(キアリⅡ型奇形)、髄液の流れがせき止められるため二次的な水頭症を起こすことが多い。
2. 脊椎の骨の異常 椎体形成の異常により側湾症、肋骨異常などが起こることがある。

 


 

腎臓・膀胱 腎臓・膀胱

1. 尿道閉鎖による巨大膀胱 妊娠初期から巨大膀胱となることが多い。放置すると両方の尿管・腎盂も巨大化し、腎臓実質が圧迫され腎機能不全となる。胎児治療(膀胱羊水腔シャント)の適応疾患である。
2. Prune-belly症候群 これも巨大膀胱を示すが、腹壁が脆弱で膀胱がプルーンベリー様であることが特徴
3. 水腎症 Hydronephrosis 尿管狭窄や閉鎖のため腎盂が拡張して腎臓実質が圧迫される。通常片側であることが多く、もう一方の腎臓が正常であれば、腎機能や羊水量は正常であることが推測できる。
4. 多嚢胞性異形成腎
Multicystic dysplastic kidney (MCDK)
腎臓内に大小さまざまな嚢胞(水溜り)ができ、腎臓自体も大きくなる。胎児期にまた縮小してくることもよくある。通常片側であり、予後良好。両側の腎臓がこの病気であれば致命的である。
5. 異所性腎 腎臓のあるべき場所に腎臓がなく他の部位(骨盤内や腹腔)に観察される。

 


 

へその緒 へその緒

1. 臍帯過捻転 臍帯が電話の受話器の線のようにコイルがきつく、赤ちゃんの育ちが遅れたり、時に胎児の血流不全になることがある
2. 単一臍帯動脈 へその緒には動脈2本と静脈1本の合計3本の血管が入っています。動脈が1本の赤ちゃんは意外と多いです。臍帯動脈が一本でその他の異常がまったく見られない場合は特に問題なく元気に生まれます。動脈が一本の赤ちゃんの数十%に赤ちゃんの合併異常が見られます。
3. 臍帯辺縁付着・卵膜付着 へその緒が胎盤から出る位置が胎盤の端のほうだったり、胎盤でなく卵膜から出ているような場合には赤ちゃんの成長がゆっくりになったり血流不全が起こることがあります。
4. 前置血管 子宮の入り口近傍にへその緒の血管が通っているのが前置血管です。生まれる前に気づかれていれば管理をしっかりして97%赤ちゃんは助かりますが、気づかれておらず分娩時に前置血管が切れて出血した場合、50%以上赤ちゃんは失血死してしまいます。