胎児の病気について

About fetal diseases

クリフムの出生前診断でわかること

出生前診断では、胎児の全身のほとんどを検査できます。解説する部位の中では、以下のような先天性の異常について調べられます。

※すべての異常や病気がわかるわけではありません。胎児の位置や向き、ママの子宮筋腫や胎盤の位置などによってみえない場合もあり、BMIが高いママは赤ちゃんがみえにくかったり、正しく結果が出なかったりすることもあります。

    • 頭部
      無頭蓋症、脳瘤、頭瘤、頭蓋骨早期癒合症、全前脳胞症、脳室拡大・水頭症、脳梁欠損、大脳の発達異常、キアリⅡ型奇形、ダンディーウォーカー症候群、ジュベール症候群、ロンベンセファロシナプシス、小脳低形成、小頭症、小脳症、滑脳症、巨脳症、片側巨脳症、限局性大脳皮質形成異常、多小脳回症、裂脳症、孔脳症、脳内出血、子宮内脳障害、くも膜嚢胞、ガレン大静脈瘤、脳腫瘍、脳内出血、脳内石灰化病変、脈絡そうのう胞
    • 脊椎
      二分脊椎症、側弯症、脊椎の異常、ボディスターク奇形
    • 顔面
      眼窩狭小・眼窩離開、眼球突出、小眼球症、白内障、鼻骨の形成不全、鼻の位置異常(無鼻症、象鼻症)、鼻腔異常(単鼻腔)、口唇裂・顎裂・口蓋裂、下顎狭小、無顎症、耳の位置の異常(耳介低位)、外耳の形の異常(耳介形成異常)
    • 心臓
      心室中隔欠損、両大血管右室起始症、ファロー四徴症、左室低形成、右室低形成、大血管転位症、大動脈狭窄(縮窄)症など
    • 肺・胸郭
      胸水貯留、横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症、先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM, CPAM)
    • 腹部
      臍帯ヘルニア、消化管閉鎖、食道閉鎖、十二指腸閉鎖、鎖肛、腹腔内のう腫、卵巣嚢腫、腹壁破裂、無脾症、多脾症、内蔵逆位
    • 四肢(骨系統疾患)
      四肢短縮症、タナトフォリック骨異形成症、軟骨無形成症、骨形成不全症、低フォスファターゼ症、関節の異常、手指・足趾の異常、羊膜索症候群、内反足
    • 腎臓、膀胱
      巨大膀胱、後部尿道弁による下部尿路閉塞、プルーンベリー症候群、尿膜管遺残(アラントイックシスト)、巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(MMIHS)、水腎症、多嚢胞性異形成腎、異所性腎、総排泄腔遺残症(クロアーカ遺残)、尿道下裂、停留睾丸(停留精巣)
    • へその緒
      臍帯過捻転、臍帯の巻絡、単一臍帯動脈、臍帯辺縁付着・卵膜付着、前置血管
    • 胎盤
      前置胎盤、絨毛膜下血腫、胎盤内巨大血腫(ブルースモーレ)

身体の部分ごとの病気

胎児の先天性の病気にはたくさんの種類があり、数十人にひとりの赤ちゃんは生まれつき何らかの病気があるといわれています。ここでは、胎児の先天性の病気のうち、代表的なものを部位ごとに紹介します。

これらのうち、クリフムで実施している胎児ドックで見つかりにくいものは、耳の異常、心臓の小さい穴、指の異常などが挙げられます。

胎児の全身画像

1.頭蓋骨の病気の種類

胎児には、何らかの原因で頭蓋骨がうまく形成されないことがあります。

無頭蓋症(むとうがいしょう)

神経管がうまく閉鎖できないために頭蓋骨全体が形成されなくなります。

脳瘤(のうりゅう)

頭蓋骨の一部が形成されず、脳が頭蓋の外に飛び出てしまいます。

頭瘤(とうりゅう)

いわゆる頭のコブで、頭蓋骨内部の脳などの組織が外に出ていない状況です。

頭蓋骨早期癒合症(とうがいこつそうきゆごうしょう)

本来より早い胎児期に頭蓋骨が癒合したことで頭や顔面の形が妊娠中に徐々に変形してしまう病気もあります。頭蓋骨早期癒合症には遺伝子変異による病気がいくつかあります。顔面の特徴や合指症や合趾症、巨大な母指などの合併症が見られることもあります。

2.全前脳胞症

妊娠のごく初期に大脳は左右に分離し超音波でも妊娠8週くらいから大脳が分離していることがはっきり見えてきます。

全前脳胞症(ぜんぜんのうほうしょう)

大脳がきちんと分離されない場合は全前脳胞症(ぜんぜんのうほうしょう)という病気です。分離の程度により、無分葉型・半分葉型・分葉型の3つのタイプに分類されています。顔面中部に口唇口蓋裂・無鼻症・象鼻・単眼症や眼窩狭小などの形成異常が合併することが多いです。

3.脳室拡大・水頭症

まず、正常な赤ちゃんの脳室はどうなっているかをみてみましょう。左右の大脳の中では脳脊髄液という水が「側脳室」の「脈絡そう」というスポンジのようなところから産生されます。側脳室の脳脊髄液、モンロー孔を通り、第3脳室に流れ、その後中脳水道という細い管を通り第4脳室へ流れ、その後、大脳の周囲や脊髄の周りのくも膜の中に循環していきます。

正常の胎児の脳室系
水頭症

脳脊髄液がせき止められてしまったため流れ出ずに脳室に残り、結果として脳室が大きくなってしまう状況は水頭症と呼ばれます。脳脊髄液の通り道の中で、「中脳水道」や「モンロー孔」が細くなったり(狭窄)詰まったり(閉鎖)すると、狭窄や閉鎖の場所よりも上部の脳室が拡大し、内圧が徐々に上昇し、周囲の大脳を圧迫します。

内圧が上昇すると、水頭症と呼ばれるようになり、脈絡そうは図のように圧縮されているように写しだされます。また、二分脊椎、脊髄髄膜瘤などが背中にある場合には、下に書いてあるキアリ奇形が起こり、第4脳室が狭くなり水頭症を合併することもあるのです。

水頭症の原因にはいろいろな染色体や遺伝子などが関係する場合があります。

水頭症1水頭症2
脳室拡大

似たような状況で、脳脊髄液は流れているのに脳室が大きい場合は水頭症とは呼びません。大脳自身の発育がゆっくりしているために脳室が大きくなっている、つまり大脳が週数に比べて薄い、ということが原因である場合があります。また、下に書いてある脳梁欠損の場合には、脳室の形態自体が変わるために脳室の後ろのほうが大きくなり、脳室拡大となることがあります。

交通性の脳室拡大

水頭症・脳室拡大というのは状況を表す言葉で、病名ではありません。水頭症にしても、脳室拡大にしても、はっきりと原因を確認する必要があります。原因により病気の名前が異なります。

クリフムでは、拡大している脳室の形から原因を絞っていきます。また、脳室拡大や水頭症に関係する遺伝子変異は100種類を超えると言われています。脳室拡大や水頭症の原因遺伝子が特定されると、生まれてからの予後や障がいの程度などが予測できることが可能となってきます。

水頭症・側脳室拡大がある場合に大切なことは、脳室ではなく、脳の詳細確認をすることと、その原因を明らかにすることです。また、顔面・手指などに特徴的な所見が出ることもあります。詳細な脳ドックでは、全身確認をして所見を確認します。遺伝子検査も必要になることがあります。

水頭症の場合には、生まれてからリザーバーやシャントを入れる手術をして余分な水を出してあげる治療をしたり、脳室の水を自然に流すような手術をする場合がありますが、水頭症の程度などによります。

クリフムでは、脳室拡大・水頭症の赤ちゃんは、詳細な胎児脳ドック、全身確認、遺伝学的検査などを行い、原因により良いと考えられる施設への紹介・コーディネートを行っています。

4.脳梁の異常

右脳と左脳をつなぐ神経線維を脳梁といいます。

脳梁欠損(のうりょうけっそん)

脳梁欠損がある場合には、脳のそのほかの部分に異常がないか、他の合併症などがないかなどを精密に検査する必要があります。脳梁欠損の場合には、頭の中の「梁(はり)」がないために、脳室の形が変化して、脳室拡大のように見えます。よく、脳室が大きいとクリフムに紹介されてこられる赤ちゃんで脳梁欠損の子供さんがおられますが、この場合、生まれてから脳外科手術の適応にならないことが多いです。

遺伝子変異による場合もあり、その場合には神経学的な症状がでることも多いとされています。脳梁欠損のほかに全く異常がなく、遺伝子変異なども見られない場合には、多くの赤ちゃんでは全く症状がなく元気に大きくなると言われています。また、脳梁欠損がある場合、右と左の大脳の間に水風船ができることもよくありますが、この水風船は自然に縮んだり、大きくなったりするので定期的に観察し、生まれてから手術の適応になるかを考えることになります。また、脳梁のある場所に脂肪腫ができることもありますが、これは良性のもので、手術の適応にはならないです。脳梁部分欠損や、脳梁が薄い場合には、いろいろな疾患が関係する場合もあります。

5.小脳・後頭蓋窩(こうとうがいか)の異常

キアリⅡ型奇形

脊髄髄膜瘤がある赤ちゃんでは、「キアリⅡ型奇形」が起こります。これは、小脳・延髄が脊柱管内に引き下ろされ、その結果として髄液の流れを止め、水頭症の原因となる病気です。キアリII型奇形という名前ですが、実際には奇形ではなく、小脳自体の病気でもありません。

ダンディー・ウォーカー症候群

小脳虫部の一部または全部の欠損と後頭蓋窩正中の嚢胞を認め、水頭症などの合併症を起こす「ダンディー・ウォーカー症候群」は、名前は知られていますが発症頻度は稀です。クリフムに「ダンディー・ウォーカー症候群」の疑いということで紹介されてこられた方で本当にダンディー・ウォーカー症候群だった赤ちゃんはほとんどいません。稀にダンディー・ウォーカー症候群の赤ちゃんが来られますが、染色体異常・遺伝子変異と関連していることが多いため、遺伝学的な検査は必ず必要になってきます。

ジュベール症候群

「ジュベール症候群」は全身にある繊毛(生体内の多くの細胞に生えている毛のようなもので、正しい方向に液体を流す)の病気です。脳では小脳の虫部がなく脳幹にも切れ込みが入った様な超音波画像やMRI画像となり、「モーラー・トゥースサイン(臼歯のような形)」という名前で有名です。「ジュベール症候群」は現在37個のサブタイプがあり、それぞれ違った遺伝子変異が関係しています。かなり重症となる子供さんも多いです。「ジュベール症候群」は家族性の遺伝子変異が原因であることが多く、原因遺伝子がわかっている場合には絨毛検査で妊娠初期に確認することが可能です。

ロンベンセファロシナプシス

小脳がうまく左右に分かれず一塊になる病気を「ロンベンセファロシナプシス」といい、珍しい病気と言われています。しかし、生まれてきても気づかれないこともあり、本当の発生頻度はわかっていません。水頭症を合併して重篤な状況になる赤ちゃんもいますし、元気に大きくなって育っている子供さんもいます。この病気はまだ関連遺伝子が発見されていません。

小脳低形成

小脳低形成は18トリソミーの赤ちゃんなどによく見られる病気です。小脳の形は小さいながら保たれていることが多いです。

6.大脳皮質形成異常

大脳皮質形成異常(MCDと呼ばれています)は、生まれてからのてんかんや発達障害など、いろいろな障がいをもたらすことがあります。

大脳皮質形成異常では、大脳の表面のシワがうまく形成されなかったり過剰に形成されたり、不整な形となったりしますが、これらの異常は妊娠後半あるいは生まれてからでないとわからないと言われています。

クリフムでは、将来、大脳皮質形成異常とならないかを妊娠18-20週の中期ドックで詳しい脳ドックを行なって判断していきます。すべてがわかるわけではありませんが、クリフムではかなり多くの大脳皮質形成障害を、脳ドックと遺伝子検査により確認してきています。ただ、診断は慎重に行わなければならず、2-3週間の間に3回脳神経フォローアップスキャンに来ていただき、一緒に発育をみていきます。

大脳皮質は妊娠前半期のいくつかのステップを経て形成されます。それぞれのステップには多くの遺伝子が関与しており、その数は100を超えると考えられています。

  • ステップ1:神経細胞がどんどん増え、必要のない細胞はなくなっていく過程
  • ステップ2:神経細胞が大脳の表面に移動していき、綺麗な層構造の大脳皮質を作っていく過程
  • ステップ3:神経細胞同士のつながりができ神経伝達が高まっていく過程

これら3つの過程における異常が以下の1),2),3)です。

(1)小頭症、小脳症、巨頭症、巨脳症、片側巨脳症、限局性大脳皮質形成異常

小頭症とは頭周囲の大きさが標準よりも-2.0SD(標準偏差)よりも小さい場合をいいます。頭が小さい場合は、小脳症の可能性もあり、遺伝子検査や脳の詳細検査が必要です。脳ドックは、大泉門という頭蓋骨の隙間から脳を見るのですが、小頭症の赤ちゃんはこの隙間が小さいため脳ドックが適切にできないことがあります。その場合には胎児脳MRIを撮像して脳内の状況を詳しく調べます。

巨脳症は頭周囲の大きさが標準よりも+2.0SD(標準偏差)よりも大きい場合をいいます。頭がただ家系的に大きいといった良性の場合も考えられますが、巨脳症といって脳細胞が増殖しすぎた、あるいは適切に必要のない細胞がなくならなかったという、最初の過程に問題があるために起こる病気である可能性があります。また、片側巨脳症といって、片側の脳だけが大きく発達してしまう場合もありますが、この場合、脳内で遺伝子変異が起こった細胞が増殖した可能性などもあります。

限局性大脳皮質形成異常は、脳内の部分的な形成障害で、これも遺伝子変異が組み合わさって起こることが報告されています。

(2)滑脳症

滑脳症は脳表面にシワができず、ツルツルな状態であると理解されていることが多いですが、厳密にはそれだけではありません。滑脳症にはいくつかの種類があり、大脳皮質の肥厚、脳回がほとんどない場合、脳回形成の異常などが特徴です。

遺伝子変異の種類により分類されています。滑脳症は妊娠後半にシワができるようになるまで診断できないとされていましたが、クリフムでは、劇的に変化するシルビウス裂の角度を測ったり、脳半球の隙間や、脳室周囲の状況などを観察することにより、滑脳症の早期発見が可能であることを報告しています。中期ドックでの脳ドックで、週数通りに脳が発達しているかどうかを観察することは極めて重要なのです。

(3)多小脳回症、裂脳症

多小脳回は、遺伝的原因と非遺伝的原因の両方によって引き起こされる非常に不均一な皮質奇形です。遺伝的原因には、22q11欠失、1p36欠失および単一遺伝子突然変異などの染色体変異が含まれます。

裂脳症は大脳半球の片側または両面に裂け目ができる脳の異常で、くも膜下腔と脳室が交通した先天的な脳形成異常であり、病変部位の皮質は多小脳回を呈することが多い。特定の遺伝子変異が原因とされている場合もあります。

孔脳症と区別が難しい場合もあります。孔脳症は、大脳半球内に脳室との交通を有する嚢胞または空洞がみられる先天異常で炎症性疾患(感染)、梗塞や出血といった脳循環障害などにより発生する可能性があり、また特定の遺伝子変異が原因となることも報告されています。

7.その他

子宮内脳障害

子宮内脳障害は、いつおこるか予測できないことがありますが、脳内血管奇形などの基礎疾患がある場合や、一絨毛膜性双胎の子宮内一児死亡後にもう1人の赤ちゃんに脳障害が起こったり、血流の変化で起こる場合があります。たまたま中期ドックにこられた赤ちゃんに脳障害が見つかる場合などもあります。脳障害がわかった場合には、その原因をみつけ、分娩の対策を考えることになります。

くも膜のう胞

くも膜のう胞は頭蓋内のいろいろな場所でのう胞(水風船)が発生して脳を圧迫します。妊娠中に消失傾向となる場合もあり、大きくなってくる場合もあります。生まれてからは小児神経外科で手術をするか検討されます。

ガレン大静脈瘤

ガレン大静脈瘤は血管の先天性異常による脳内にできる血管の瘤です。「静脈瘤」という名前がついていますが、実は動静脈シャント(動脈と静脈が末梢血管を通さずに繋がっている状態)なのです。「ガレン大静脈瘤」は治療方法もありますが、胎児期に脳内の循環障害のために脳障害が多発することがあるので、脳神経超音波検査で定期的に脳内の詳細チェックが必要になります。

その他、胎児脳ドックで見つけられる異常には以下のようなものがあります。

脳腫瘍

脳腫瘍にはいろいろな種類があり、悪性か良性かを診断する必要があり、また腫瘍に伴う出血の程度なども見極める必要があります。

脳内出血

出血を起こしやすい遺伝子変異が見つかることもあり、また母体の血小板抗体などが関係することもあります。脳内出血がある場合、刻々と状況が変わっていきます。そのため、クリフムでは脳出血が疑われる場合には数日あるいは1週間ごとの脳フォローアップスキャンを繰り返し、遺伝子検査や血液検査などを実施します。状況により、分娩方法やタイミングを決めていく必要があります。クリフムでは脳内出血の例では分娩施設と協力して脳ドックを繰り返しています。

脳内石灰化病変

脳内石灰化病変がある場合、まったく良性のこともありますが、ママの感染(サイトメガロウイルスやトキソプラズマ)が赤ちゃんに移行して脳内に多発する石灰化病変となることがあり、母体の抗体の検査やアビディティ検査などが必要となります。

脈絡そうのう胞

脈絡そうとは、大脳の側脳室の中にあり、水(脳脊髄液)を産出するところです。脈絡そうは脳神経ではなく、ただの「水を出すスポンジ」のようなものです。スポンジから出てくる水がスポンジの中に溜まって「のう胞(水たまり)」になった場合、脈絡そうのう胞(CPC)と呼びます。なぜできるのかははっきりわかってはいませんが、脳神経に害を与えるものではありません。18トリソミーの赤ちゃんには脈絡そうのう胞がよく見られることがあります。脈絡そうのう胞はだいたい25週くらいまでに消失してしまうことが多いですが、消失しなくても、まったく問題はなく、脳神経の発達には影響しません。脳の中に「影」があるとか「水が溜まっている」ということで紹介されてこられることが多いですが、胎児ドックでは、脈絡そうのう胞がある赤ちゃんの脳ドックを詳細に行い、脳発育を観察し、全身の状況を確認して、染色体数異常などの可能性について確認します。中には18トリソミーモザイクといって、18トリソミーと正常染色体とが混じっている赤ちゃんもいますので、少しでも心配がある場合には羊水検査をして確認します。18トリソミーについては、羊水検査をした翌日に確定結果が出ます。

脈絡そうのう胞
脈絡そうのう胞

脊椎

二分脊椎症

妊娠初期に神経管がうまく閉鎖しないことで、脊髄神経を包む膜や脊髄神経が外に露出してしまいます。脊髄神経が外に出ている場合を、脊髄髄膜瘤といいます。小脳や延髄が脊柱管に引きおろされ(キアリⅡ型奇形)、髄液の流れがせき止められるため、二次的な水頭症を起こすことが多い病気です。

側弯症

背骨が左あるいは右に弯曲した状態をいいます。小児期にみられる脊柱変形も含まれます。胎児の間には目立たないことも多いですが、椎体が左右非対称に三角型になる半椎体になっている場合には弯曲が胎児期から目立つこともあります。

脊椎の異常

椎体形成の異常により側湾症、肋骨異常などが起こることがあります。

ボディスターク奇形

ボディスターク奇形は、適切な日本語訳がありません。ボディスターク奇形は腹壁が欠損して、腹部の臓器が赤ちゃんの羊膜の外で発育し、重度の脊椎側弯を伴います。側弯は腹部臓器が出ている側に凸となり、時に「し」の字に側弯し、お尻が顔の横にあり、そこから足が頭側に生えているように見えることもあります。頭部顔面や上肢は全く正常に見えることがほとんどです。胎盤に直接腹部臓器が付着しているように見えます。臍帯はとても短く、赤ちゃんは身動きができません。欠陥の重症度のため、この状態はほとんどの場合胎児にとって致命的です。「初期から赤ちゃんが小さい」とか、「きれいに赤ちゃんの頭臀長が測れない」ということで紹介されることが多いです。原因はわかっていませんが、次回妊娠で繰り返す可能性は極めて低いです。

顔面

1.眼の異常

眼窩狭小

全前脳胞症などで見られる両目の間が狭くなる状況をいいます。

眼窩離開

染色体異常や頭蓋骨早期癒合などで見られる、両目の間がひろく目が離れている状況をいいます。

眼球突出

眼が突出している病気です。顔面骨の異常、頭蓋骨早期癒合症などで見られます。

小眼球症

13トリソミーなどでも見られる眼球が小さい病気です。目の機能も失われていることが多いです。

白内障

大人の病気というイメージがありますが、胎児期から先天性白内障が見つかることがあります。染色体異常、頭蓋顔面奇形、筋骨格異常、風疹などのウイルス感染など、10000人に1-6人に見つかります。超音波検査ではレンズが白濁していることでわかります。

2.鼻の異常

鼻骨の形成不全

ダウン症、その他の染色体異常の赤ちゃんなどで、鼻骨の骨化がゆっくりしている場合には鼻骨形成不全と言われます。ただ、家系や個人差もあり、鼻骨が小さいからといって病気というわけではありません。

鼻の位置異常

全前脳胞症などの病気に伴うことがあります。無鼻症・象鼻症という名前で呼ばれることもあります。

鼻腔異常

鼻の孔の数がひとつであると単鼻腔症という病気です。この場合、多くが鼻腔の奥が塞がっていて鼻呼吸ができないことがあります。

3.口唇裂・顎裂・口蓋裂

もっとも多い顔面異常で多因子異常といわれます。くちびるのみが裂けている場合を口唇裂、はぐきが裂けているのを顎裂、くちの中の丸い天井が裂けている場合を口蓋裂といいます。

口唇裂のみの場合、口唇裂と顎裂の場合、口唇裂と顎裂、口蓋裂を伴っている場合があります。口蓋裂のみの場合は出生前の超音波ではわからないことが多いです。これらの異常は単独で起こる場合と、染色体異常やからだ全体の症候群のひとつとして現れる場合がありますので口唇裂がある場合には、詳細な超音波検査や染色体検査などが必要になります。

口蓋の奥の方は軟口蓋と言いますが、軟口蓋裂のみがある場合もあります。軟口蓋裂は下顎狭小と合併してピエールロバンシークエンスという病気の場合があります。

4.下顎の発達異常(下顎狭小、無顎症)

下顎が小さい場合(下顎狭小)は、染色体や遺伝子の異常が関係していることがあります。下顎がまったく形成されない無顎症の他、妊娠中に徐々に改善する場合もあります。下顎が小さい時には同じ部分からできる耳の位置も低いことが多いですが、この場合は染色体異常や遺伝子変異による先天異常であることも多いと言われています。下顎のみが小さく耳の位置が正常な子供さんは、ピエールロバンシークエンスといった病気の場合もあります。

5.耳の異常

耳介低位

耳の位置が低い場合には遺伝学的な病気と関係することがあります。クリフムでは耳介の位置は妊娠初期ドックの時に確認します。初期ドックで耳介低位と下顎狭小がある場合には染色体異常や遺伝子変異が見つかることも多いですが、中期ドックの時期にはすっかり正常位置になっている場合もあります。

耳介形成異常

耳の形の異常がみつかることもあります。片方だけが小耳介であることもあります。超音波検査で耳介を両側とも確認することは非常に難しいです。クリフムの胎児ドックでも片側だけしか確認できないことが多いですが、上のこどもさんに耳介形成異常があったという方の場合などは、時間をかけて両側の耳介を確認するようにしています。

心臓

心室中隔欠損、両大血管右室起始症、ファロー四徴症、左室低形成、右室低形成、大血管転位症、大動脈狭窄(縮窄)症など

先天性心疾患の胎児診断

先天性心疾患は生まれながら心臓に病気を持って生まれてくる心臓病のことです。100出生に1人の割合で生まれてきます。

そのほとんどは手術などを必要としない軽症例です。しかし、出生後引き続き手術などの治療が必要な重症な先天性心疾患は1000出生に4人の割合で生まれてきます。

先天性心疾患の胎児診断は重症な先天性心疾患を胎児期に診断し、出生後に予測される緊急事態に対応できるように準備することが目的です。

正常心臓
正常な心臓
正常な心臓
心室中隔欠損(VSD)
心室中隔欠損(VSD)
心室中隔欠損(VSD)

先天性心疾患のなかで最も多く見られます。左右の心室を隔てる壁に孔(穴)が残る心臓病です。欠損孔の大きさで症状が決まりますが、欠損孔が妊娠中・出生後も小さくなることがあり自然に閉鎖することもあります。このため、出生後に正常と診断されたり、重症ではないと診断されたりすることもあります。

他の心臓病や染色体異常を合併することがありますので欠損孔以外の検査が必要です。特に、大動脈縮窄を合併すると出生後に重症化することがあり専門的治療が必要です。

心室中隔欠損以外に異常がなければ出生後に病状が悪化することはありません。頻度が多いですが、意外に出生前の診断は難しい時があります。

両大血管右室起始

大きな心室中隔欠損があり、肺動脈・大動脈の両大血管が右室から起始する先天性心疾患です。心室中隔の発生過程の早期に異常があってできる先天性心疾患になります。このため、心室中隔欠損と区別に困ることがあります。他の心臓病や染色体異常を合併することがあるため、欠損孔以外の検査が必要です。

ファロー四徴
ファロー四徴
ファロー四徴

チアノーゼ(顔色が悪い)を主症状とする代表的な先天性心疾患です。大きな心室中隔と細い肺動脈が特徴として挙げられます。

肺動脈の大きさで病状が変化します。両大血管右室起始と発生過程が同じなので区別が困難ですが、治療方針には違いはありません。肺動脈の太さによって病状や治療方針が異なるほか、他の先天性疾患や染色体異常を合併することがあります。

左室低形成
左室低形成
左室低形成

全身に血液を送る左室が小さく、機能できない先天性疾患です。全身への血液は動脈管を介して供給されます。生後2週間以内に動脈管閉鎖によるショック症状を突然発症します。3回以上の手術が必要な重篤な心疾患です。

しかし、治療成績は年々向上し、90%を超える手術成功率の施設もあります。長期の入院生活が必要で、手術後も通院と投薬が必要です。
根治手術後は通常の日常生活を送れる可能性があります。

学校体育に参加できる例もたくさんありますが、学習障害で支援学校が必要な例もあります。

右室低形成
右室低形成
右室低形成

右室と三尖弁、肺動脈が狭いことで肺への血液供給ができない先天性心疾患です。肺の血液は動脈管を介して供給されます。生後2週間以内に動脈管閉鎖によるチアノーゼの増悪が問題となりますので、専門的な治療が必要です。3回以上の手術が必要な心疾患になります。

しかし、90%を超える手術成功率の施設もあります。手術後も通院と投薬が必要ですが、根治手術後は通常の日常生活を送れる可能性がある疾患です。学校体育に参加できる例もたくさんあります。

大血管転位
大血管転位
大血管転位

大動脈と肺動脈が逆転している先天性疾患です。右室から酸素濃度の低い血液が大動脈に駆出され、左室から酸素濃度の高い血液が肺動脈に駆出されます。このため、出生後直ぐに重度のチアノーゼを発症する重症な先天性疾患です。胎児期から専門的治療が必要になります。

治療は生後1週間から2週間で大血管を転換する手術を行います。治療成績は良好で、手術後は通常の日常生活を送れる可能性があり、学校体育に参加できる例もたくさんあります。

大動脈狭窄(縮窄)

全身に血液を供給する通路である大動脈に細いところがある先天性疾患です。動脈管の位置が細くなっており、下半身への血液は動脈管を介して供給されます。

生後2週間以内に動脈管閉鎖によるショック症状を突然発症する例もあります。専門的な治療が必要ですが、狭窄の程度を正確に診断できないこともあります。新生児期に手術が必要な症例もありますが、狭窄が自然に太くなる例も。心室中隔欠損を合併すると強い症状が見られますので、慎重な診断が必要です。出生前診断は難しいこともよくあります。

大動脈狭窄(縮窄)
大動脈狭窄(縮窄)

心臓病が疑われる場合には、染色体数の異常や染色体構造異常・微細染色体異常などの可能性が高いと言われています。クリフムの絨毛検査・羊水検査では微細染色体異常まで確認できます。

肺・胸郭

胸水貯留、横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症、先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM, CPAM)

胸水貯留

肺のまわりに水がたまる病気です。片側だけにたまる場合も両側にたまる場合もあります。片側だけの場合は良性の乳糜胸水であることが多く、1-2週間で消えることもあります。両側に溜まっている胸水も消えていくことがありますが、全身状態が悪い場合や、心不全などの場合には胸水が増量することもあります。

片側胸水両側胸水

横隔膜ヘルニア

横隔膜に孔があいているため、胃や腸管、その他の腹部の臓器が胸郭に入り、肺が圧迫されて肺低形成になる病気です。一番多いのは赤ちゃんの横隔膜の左後ろに穴が空いているタイプ(ボホダレックタイプ)ですが、右側に穴があいている場合や、横隔膜のほとんどの部分がないという横隔膜欠損という場合もあります。横隔膜ヘルニアでは胃泡や腸管が胸郭に入ってしまっていることが多いですが、重要なことは肝臓が胸郭に入っているかどうか、また、肺がどれくらい小さくなってしまっているかということです。これらは専門の施設ではいろいろな指標で測定して、予後がいいかどうかある程度予測をします。分娩時には、赤ちゃんがうぶ声をあげてしまうと小さくなった肺が潰れてしまう可能性があるため、生まれた瞬間から呼吸管理をしっかりとできる周産期センターで産むことが必要になります。小さくなった肺でもしっかり大切に育ててあげると大きく機能できるようになっていきます。横隔膜ヘルニアは、出生前診断がしっかりできているかどうかで、生まれてからの予後が大きく違うことになります。

先天性横隔膜ヘルニア

横隔膜弛緩症

お腹の臓器が胸郭に入っている様に見えるけれども、実際には横隔膜が緩んでいるだけで横隔膜に穴があいていない状況をいいます。横隔膜弛緩症の赤ちゃんは、時に横隔膜ヘルニアといわれたり、正常と言われたりする場合があり、患者様がとても不安になりますが、予後は良好であることがほとんどです。

横隔膜弛緩症

先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM)・先天性肺気道奇形(CPAM)

先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM)は肺に嚢胞がたくさんでき、その嚢胞形成のため肺低形成になる病気です。自然消失の可能性もあります。
先天性嚢胞性腺腫様奇形は嚢胞のサイズにより3型に分類されてきていましたが、近年、病理組織学的に発生部位を考慮した新分類(5型)が推奨され、先天性肺気道奇形(CPAM)とも呼ばれています。腫瘍の大きさはまちまちで、妊娠中に腫瘍が増大していくことが多いです。妊娠18週前後から目立ってくることが多く、妊娠初期に見つかることはありません。妊娠中にかなり大きくなる場合には、横隔膜を押し下げて正常な肺が押されて小さくなってしまいます。重症になると循環が悪くなり、胎児水腫となって赤ちゃんがお腹の中で生きていけない場合もあります。でも、CCAM, CPAMは妊娠中にどんどん小さくなることも多いのが特徴です。腫瘍が小さくなると反対に正常肺はどんどん大きくなります。CCAM, CPAMと診断されても、経過がどんどんよくなる、生まれてから手術をしても大きくなっている子供さんたちはたくさんいます。クリフムにも元気に小学生や高校生になっている先輩たちがたくさんいます。

先天性嚢胞状腺腫様形成異常

腹部

赤ちゃんの腹部疾患が疑われる場合には、生まれてからの状況などについて、専門の小児外科の先生にご紹介し、出生前カウンセリングを受けていただくようコーディネートを行なっています。

臍帯ヘルニア

へその緒の中に腹腔内の臓器が出ている状態です。出ている臓器はヘルニア嚢に包まれています。合併症があることも多い病気です。臍帯ヘルニアがある場合には染色体異常がないかを調べておくことが必要です。クリフムでは微細染色体異常まで調べられます。

消化管閉鎖

胎児は羊水を飲んでいます。消化管は口から食道、胃、十二指腸、小腸(空腸から回腸、大腸(結腸から直腸)、肛門までを指し、飲んだ羊水は消化管で吸収されていきます。消化管閉鎖(狭窄)は消化管の途中につながっていない部分(閉鎖)や狭い部分(狭窄)が先天的にある病気です。食道閉鎖、十二指腸閉鎖(最も多い)、小腸閉鎖、鎖肛などが消化管閉鎖の主な病気です。消化管閉鎖や狭窄があると、羊水がうまく流れていくことが出来ず、閉鎖(狭窄)部位より上の消化管が拡張したり、羊水が増えて羊水過多という状態となることもあります。

食道閉鎖

食道閉鎖は生まれつき食道が盲端に終わり閉鎖している病気です。A型からE型まで5つ病型にわかれますが、気管と食道との間に交通(気管食道瘻)があるC型と呼ばれているタイプが最も多いです。気管食道瘻があるため、胃には羊水が少量ずつ入るので、超音波で見ると胃は小さくうつり、羊水量が増えていきます。染色体数異常や心奇形などの合併症が見られる場合も多いです。

十二指腸閉鎖

十二指腸閉鎖は腸閉鎖のなかで最も多く見られ、ダウン症などの染色体異常による場合があり、心奇形、鎖肛などの合併奇形が見られることも多くあります。超音波検査では、胃と十二指腸に入った羊水がそれ以降の消化管に流れないため、拡張した胃と十二指腸が2つ腹腔内に目立つためダブルバブルサインと呼ばれる画像が見られます。十二指腸閉鎖の場合には、羊水過多はそれほど目立たない場合もあります。

鎖肛

鎖肛は先天的に肛門がないために便が排泄されない病気で、直腸肛門奇形の一種です。胎児はママの子宮の中では便をしないため、出生後に便がでないことで発見されることが多く、生まれる前に見つかることは少ないと言われています。超音波検査では初期にわかる場合もあります。鎖肛はいろいろなタイプがあり基本的には高位型・中間位型・低位型と分類され、タイプにより治療や予後も違ってきます。高位ほど重篤な奇形と考えられており、また合併奇形も見られる場合があります。消化管の一番下の部分の閉鎖なので、羊水量は正常であることがほとんどです。

腹腔内のう腫

腹腔内の嚢腫(みずたまり)は、どこに由来するものかで、まったく違う経過をとります。腸由来であるか、卵巣由来であるか、ときには尿管などに由来するものもあります。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は女児の腹腔内の嚢胞性病変で一番多い病気です。妊娠中に茎捻転を起こすケースもありますが、自然に縮小することもあります。

腹壁破裂

へその右側に穴があいていることで、腹腔内の腸管やその他の臓器が外に出てしまう病気です。合併症は少なく、染色体異常や合併症は少ないと言われています。出生後の手術により予後が良いことが多いのが特徴です。

無脾症・多脾症

本来、人間は左右対象と思われがちですが、実は左右が非対称の部分があります。例えば、心臓はやや左に位置し、胃も左側にあります。肝臓は右側が大きく左側に向かって細くなる非対称な形をしています。

無脾症・多脾症とは、左右非対称であるはずの内臓が一部左右対称性となってしまっている病気です。多脾症では左側にあるものが両側に(左側相同)、無脾症では右側にあるものが両側に(右側相同)左右対称に存在します。無脾症・多脾症は内臓錯位と呼ばれることもあります。(次の内蔵逆位とは異なります)。本来、心臓の構造も左右は非対称で、右側の心臓と左側の心臓は違う働きをするものです。左右非対称であるべきところが対称性となる無脾症・多脾症では80%以上で先天性心疾患を合併することになります。胎児の超音波検査では、胃の位置と心臓の向きが本来両方ともに左であるのに、これらの位置に矛盾があることで、無脾症・多脾症に気づくことが多いです。合併する心臓疾患が予後に影響します。また、脾臓は本来、からだを守る免疫に関与しているので、無脾症では免疫機能が低下し感染症にかかりやすいと言われてます。無脾症・多脾症が疑われる場合には、生まれてからの状況などについて、専門の小児循環器科の先生にご紹介し、出生前カウンセリングを受けていただくようコーディネートを行なっています。

内蔵逆位

内臓が、鏡に写したように左右反転している場合、内蔵逆位といいます。胸腹部の臓器が完全に反転しています。合併症もないことが多く、手術などの必要もありません。内蔵が完全に反転しているため、生まれるまで気づかれないこともあります。

四肢(骨系統疾患)

四肢短縮症

100種類以上の先天性の四肢短縮が報告されています。肋骨などの形成にも異常が見られることがあり、肺低形成のため予後が悪い場合もあります。多いものでは成長因子受容体である遺伝子変異によるタナトフォリック骨異形成症、コラーゲン遺伝子の変異でおこる骨形成不全症などがあります。また、最近酵素補充療法といった治療が可能となった低フォスファターゼ症なども含まれます。その他として、軟骨無発生症、点状軟骨異形成症、窒息性胸郭異形成症、彎曲肢異形成症など多くの骨系統疾患があります。それぞれの疾患にいろいろなタイプがあり、軽症から重症までがあり、出生前診断で妊娠初期からわかる場合や、妊娠中期以降に徐々にはっきりしてくるものまで様々です。ここでは、タナトフォリック骨異形成症、骨形成不全症、低フォスファターゼ症について解説します。

これらの確定診断は骨の所見や遺伝子変異を確認することですが、クリフムでは詳細超音波検査の後、絨毛検査や羊水検査で遺伝子検査をすることが可能で、最短で検査の翌日に結果を出せるため、多くの施設から四肢短縮症の疑いのある赤ちゃんが紹介されてきます。軽症の軟骨形成異常などが判明することもあります。骨系統疾患のおおくは突然変異ですが、中には両親由来の遺伝疾患であることもあります。四肢形成異常がある場合には、生まれてからの状況などについて、骨系統疾患の遺伝分野を専門とする医師や小児整形外科の先生にご紹介し、出生前カウンセリングを受けていただくようコーディネートを行なっています。

タナトフォリック骨異形成症

妊娠初期から大腿骨や上腕骨が極端に短く、妊娠中期には四肢短縮に加え肋骨の発達が悪いために胸郭が小さく凹んでいるように見えることが特徴です。成長因子受容体であるFGFR3遺伝子という遺伝子の変異が突然変異で起こることが原因と言われています。この遺伝子により骨の形成は悪くなりますが、脳は過剰に発達し、妊娠15週くらいから脳の一部に限局した過剰発達が見られます。生まれてからは重症の四肢骨の短縮による低身長や肋骨の短縮による呼吸障害が見られ、生まれてすぐに死亡することも多く、以前は致死性骨異形成症とも言われていましたが、現在では人工呼吸管理により長期生存例もあるとされています。クリフムの胎児ドックでは妊娠初期から特徴的な四肢の形態と、脳内異常などによりタナトフォリック骨異形成症が疑われ、遺伝子検査により確定することが多いです。

骨形成不全症

骨形成不全症の赤ちゃんは骨がもろく弱いので骨折しやすく骨の変形をきたす病気です。目の強膜が青くなったり、難聴が見られたりすることもあります。タイプはいくつかあり、I型コラーゲン遺伝子(COL1A1, COL1A2遺伝子)の変異が原因とされています。両親いずれかが同じ病気で遺伝する場合、健全な両親の両方に因子があり赤ちゃんがその因子を両方とも受け継ぐために起こる場合、両親に因子がないのに赤ちゃんに病気がおこる突然変異といろいろな場合があります。生まれてからは骨折や骨の変形がおこり、手術や薬剤投与で治療することになります。クリフムの胎児ドックでは妊娠早期から骨形成不全症が疑われることがあり、遺伝子検査により確定することが多いです。

低フォスファターゼ症

血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値が低下するためにピロリン酸という物質が蓄積して骨の石灰化が障害され骨の低石灰化、くる病様の変化が引き起こされるとされている病気です。軽症型、中等症型、重症型があり、重症型では全身の骨がほとんど超音波でも描出されず、生後の予後も不良です。中等症型では最近開発されたALP酵素補充療法が効果的であるとされています。生まれてからは、ほとんど何も症状がない軽症型から常に介助が必要となる重症型までさまざまです。赤ちゃんの骨が曲がっていたり、骨折しているような所見があったりする場合、両親の血清ALP値の低下で疑われ、特定の遺伝子変異があれば確定診断となります。遺伝子変異の場所を特定することでもタイプを特定していくことが可能です。クリフムの胎児ドックでは妊娠早期から低フォスファターゼ症が疑われることがありますが、骨形成不全症やその他の疾患と鑑別が難しい例もあります。両親のアルカリフォスファターゼを調べて、両親ともに低い場合には、赤ちゃんの低フォスファターゼ症を疑うことになりますが、最終的には遺伝子検査により確定することが多いです。低フォスファターゼ症と診断した場合には、生まれてからの状況などについて、骨系統疾患の遺伝分野を専門とする医師や小児整形外科の先生にご紹介し、出生前カウンセリングを受けていただくようコーディネートを行なっています。

関節拘縮症

手首・肘・その他の関節が、屈曲・拘縮(こうしゅく)することがあります。拘縮とは、なんらかの原因により、関節が正常な範囲で動かなくなってしまった状態のことをいいます。子宮内では羊水がとても少なくなったり(羊水過少)、子宮の形の異常があったりすることで、赤ちゃんが手足を動かすことができない状態が長く続くと四肢が拘縮してしまうこともあります。また、18トリソミーの赤ちゃんでは妊娠10週くらいから手首が拘縮したり、中期くらいから手指が重合してしまいます。その他の染色体異常や筋ジストロフィーやその他の先天性遺伝性疾患などで、手首や足首、あるいは大関節が拘縮して固まってしまうことがあります。生まれつき関節拘縮症がある赤ちゃんでは、関節拘縮症の原因にもよりますが、比較的正常な知能が発達することもあります。また、生まれてからいろいろな理学療法などで関節拘縮を治療していくことが可能です。関節拘縮症の原因が何かをはっきりさせることが、予後を予測することにつながります。詳細な超音波検査や遺伝子検査の上、原因を解明して、生まれてからの赤ちゃんの予後を考えていくことが必要です。

手指・足趾の異常(多指症・多趾症、少指症・少趾症、合指症・合趾症、裂手症・裂足症)

指の数が多い(多指症・多趾症)、あるいは少ない(少指症・少趾症)異常、指がくっついている病気(合指症・合趾症)、手足が裂けたような状態になっている場合(裂手症・裂足症)などがあります。多指症は小指側の場合と親指側の場合があります。小指側の多指症は13トリソミーなどでも見られます。また親指側の多指症はダウン症・18トリソミーでも見られますし、その他の原因のこともあります。また、形態はいろいろで、親指爪がハート型になっているだけのタイプから一本確実に指が多い場合など色々です。裂手症・裂足症は染色体異常よりも遺伝子変異によりおこるEEC症候群(裂手裂足・外胚葉異形成・口唇口蓋裂を特徴とする症候群)などがあります。クリフムの胎児ドックでは妊娠中期で手指や足趾の確認をし、何らかの疑いがある場合は時間をかけて確認をしますが、赤ちゃんは手を握っていたり手を隠したりするためすべての手指や足趾の異常を確実に映し出すことは難しいこともあります。

羊膜索症候群

羊膜が妊娠ごく初期に破れて手足に羊膜がまとわりついてしまうことで、体の一部が発育しなかったり、裂けてしまったりすることがあります。これは子宮内でおこる交通事故のようなもので、症状や程度は交通事故と同じで個々に違っています。指一本の先だけが障がいされることもありますが、頭蓋や顔面が大きく障がいされることもあり、致命的なこともあります。羊膜索症候群は、頭蓋が障がいされて脳が飛び出してしまっているような重症例を除き、かなり出生前診断の経験があるエキスパートでないと診断できないことが多く、妊婦健診では「順調です」と言われているケースがほとんどです。また、妊娠後半になると体に付着している羊膜索がだんだんと見えなくなり、羊膜索症候群と診断することが困難になります。クリフムでは、これまで多くの羊膜索症候群の赤ちゃんたちを妊娠初期に診断してきました。

羊膜索症候群では、妊娠ごく初期に赤ちゃんを包む水風船のような羊膜が破裂することで羊膜の破片が柔らかい赤ちゃんを傷つけるので、小さい赤ちゃんの出っ張っている部分が障害されます。赤ちゃんの出っ張っている部分は頭、顔、手、足、臍の緒などです。臍の緒に羊膜索が絡むことで、その後臍帯の血流が悪くなり赤ちゃんが死亡してしまうこともあります。また、羊膜索症候群では赤ちゃんの外側で起こる事故なので、お腹や胸の臓器は障がいされないことが普通です。

羊膜索症候群の診断、とくに手足の先の診断には時間をかけて何度も確認する必要があります。ほかの先天性の手指、足趾の病気と違って、事故による形態の異常なので、法則性がないためです。

羊膜索症候群

内反足

先天性内反足は、足が内側に強く反り返った状態で出生する疾患で片側だけの場合と両側の場合があります。二分脊椎(脊髄髄膜瘤)に合併する場合や、染色体異常や遺伝子変異などに合併する場合もありますが、原因不明であることも多く突然発生する場合があります。合併症がない内反足は妊娠初期には目立たず、妊娠15週あたりから徐々に内反足となり、妊娠中期ドックで見つかるケースが多いです。生まれてからは小児整形外科でギプス、アキレス腱の手術、装具などの治療を行うことで、普通に走ったり生活できるようになります。合併症がないかどうかをきちんと判断することが非常に重要です。

腎臓・膀胱

巨大膀胱、後部尿道弁による下部尿路閉塞、プルーンベリー症候群、尿膜管遺残(アラントイックシスト)、水腎症、多嚢胞性異形成腎、異所性腎、遊走腎、総排泄管遺残症

巨大膀胱

妊娠初期に膀胱が大きい場合、巨大膀胱と言われることがあります。膀胱が大きいというのは超音波で膀胱の長径が7mmを超える場合を指します。これには図のように、いろいろな原因が考えらます。13トリソミーや18トリソミーなどの染色体数異常の場合も妊娠初期に膀胱が大きくなることがあります。また、以下に記載した後部尿道弁による下部尿路閉塞、プルーンベリー症候群、尿膜管遺残(アラントイックシスト)なども妊娠初期から巨大膀胱が目立ちます。

妊娠初期に巨大膀胱を呈する先天性疾患の鑑別

後部尿道弁による下部尿路閉塞

膀胱にたまった尿は尿道を通って排泄され、羊水になります。尿道に先天性の閉塞があり、うまく尿を出せない状況を下部尿路閉塞といい、後部尿道弁という膜状の弁が原因となることが最も多いです。妊娠初期から巨大膀胱となることが多い傾向にあり放置すると両方の尿管・腎盂も巨大化し、腎臓実質が圧迫され腎機能不全となってしまいます。胎児治療(膀胱羊水腔シャント)の適応疾患です。ただ、自然に軽快する例もあります。

プルーンベリー症候群

こちらも巨大膀胱を示しますが、腹筋が欠損していて、尿路異常や停留精巣などがあり、主に男児に発生する先天性の疾患です。出生前の超音波では、腹部表面が非常に薄く、膀胱の形が図のように突出した形をしていることが多いです。尿を押し出す腹筋がないですが、ある程度膀胱が大きくなると自然に圧力で羊水内に排尿されるため、羊水量はある程度保たれることがあります。胎児治療を行なっている施設もありますが、尿路系の問題だけでなく、腹筋が欠損していることによる合併症がかなり重度となる場合があります。

尿膜管遺残(アラントイックシスト)

胎生早期には膀胱は胎生早期の老廃物を母体側へ排泄するため、臍帯と尿膜管でつながっています。尿膜管は胎生4~6週に退化して索状化し膀胱と臍とのつながりはなくなりますが、この尿膜管が消失せず遺残してしまったものを尿膜管遺残といい、いくつかのタイプに分けられています。出生前の超音波では、膀胱が大きく、臍を通じて体の外側にも尿が貯まるのう胞があり、こののう胞と膀胱が交通していることが確認されます。胎児の間にこの交通がなくなる場合もありますが、多くは、生まれてから、外側ののう胞を切除すると膀胱にたまった尿がおへそから滲み出てくるため、手術をし、感染しないように処置をすることになります。生まれた後の予後は合併症などがなければ良好です。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(MMIHS)

巨大膀胱、短小結腸を呈し、重篤なイレウス症状を来すまれな疾患で頭文字をとり、MMIHSとよばれています。その名のとおり、腸管蠕動不全があり、生まれてからもこの状態が続き、経腸栄養が難しく完全静脈栄養となることがほとんどです。胎児治療による膀胱―羊水腔シャントなどで胎児期を過ごすことができますが、生まれてからはこの疾患の多くが重症の経過をたどり、死亡率も高く、小腸移植や多臓器移植の対象疾患とも考えられる疾患です。

水腎症

尿管狭窄や閉鎖のため、腎盂が拡張して腎臓実質が圧迫されてしまう病気です。通常片側であることが多く、もう一方の腎臓が正常であれば、腎機能や羊水量は正常であることが推測できます。

多嚢胞性異形成腎(MCDK)

腎臓内に大小さまざまな嚢胞(水たまり)ができ、腎臓自体も大きくなります。胎児期に縮小することもよくあります。通常片側(左の図)であり、予後は良好です。ただ、右の図のように両側の腎臓がこの病気であれば、両側の腎不全であり、尿が作られないため羊水過少となり、二次的な肺低形成や四肢の関節拘縮症も合併し、致命的となってしまいます。

片側MCDK腎両側MCDK

異所性腎

本来あるべき場所に腎臓がなく、他の部位(骨盤内や腹腔)に観察される異常です。大人になってからたまたまMRIなどで発見されることもあります。胎児中期ドックや後期ドックでは左右の腎臓を確認するため、異所性腎だけでなく、片側の腎無形成などもわかることがあります。異所性腎では腎臓の先天異常を合併していることもありますが、もう一方の腎臓が正常であれば、全く問題ない生活を送ることができます。

総排泄腔遺残症(クロアーカ遺残)

総排泄腔(クロアーカ)はだれでも胎芽の最初の頃には持っています。胎生5週に直腸肛門と膀胱尿道になる部分の区別がなく、総排泄腔とよばれる一つの腔として存在し、その後、総排泄腔の中に壁ができて前後に分離され、胎生9週には膀胱・尿道と直腸・肛門が分かれます。総排泄腔遺残症は、この総排泄腔が分離されないまま遺残した病気です。女児にしか発生しません。正常では尿道、腟、肛門がそれぞれ会陰・肛門部に開口しますが、総排泄腔遺残症では尿道、腟、直腸が総排泄腔に開口し、会陰部には総排泄腔のみが開口します。遺残した総排泄腔の部分は共通管ともよばれます。原因は不明で、環境因子や遺伝子変異など、多因子が関係することが原因とされています。生まれてからは小児外科治療が中心となりますが、段階を経て手術していくため、生まれてすぐは人工肛門を設置して、尿と弁が混じることを避ければお家に帰って元気に大きくなるのを待つことになります。その後、段階的に、総排泄腔に開口する腟・子宮と直腸を分離し、直腸・肛門と腟を作成する手術が行われます。

正常妊娠初期に総排泄腔から直腸肛門と膀胱尿道ができる過程クロアーカ

尿道下裂

尿道下裂は、尿の出口が陰茎の先より根元側にある病気で、尿が陰茎の先から出ずに、陰茎の下側から出てしまう病気です。原因は尿道の発達に問題があったか、ホルモン異常などが言われています。合併症として停留精巣、短小陰茎などがあります。超音波検査では、陰茎の先の形がやや四角くなって陰茎が小さい場合に疑われます。尿道開口部を特定するには時間をかけて胎児が排尿するタイミングでカラードプラなどで排尿方向を確認することで確定診断ができますが、なかなか容易ではありません。

停留睾丸(停留精巣)

男児では、睾丸(精巣)がお腹の中で発生し、そこから鼠径管を通って陰嚢に降りてきます。妊娠後半に陰嚢(いんのう)に降りてきます。中期ドックの時期には全例で睾丸は陰嚢内には認められませんが、妊娠29-30週の後期胎児ドックでは95%以上の男の子で両方の睾丸がきちんと陰嚢の中に降りているのを確認できます。後期ドックの時期に片方しか降りていない場合や両方ともに降りていない場合があります。片方のみの場合は34週くらいで再検査するとほとんどの場合は両方の睾丸を確認できます。両方ともに睾丸が降りていない場合には、陰茎(ペニス)が小さいとか、尿道下裂などを合併していたり、染色体異常などの合併の場合もあります。停留睾丸は手術で治療可能です。

へその緒

臍帯過捻転

臍帯が電話の受話器の線のようにコイルがきつく、赤ちゃんの育ちが遅れたり、時に胎児の血流不全になることがあります。赤ちゃんの成長とともに、自然に解消してしまうこともあります。

臍帯の巻絡(けんらく)

臍帯が首に一回ないしは数回巻いているのはよくみられます。また、足や体に巻きついていることもあります。ほとんどの場合には問題なく、巻絡がいつの間にかなくなっていることもあります。まれに、胎児の子宮内での回転や動きにより、巻絡が強くなり、子宮内胎児死亡が起こることもあります。また、分娩の時に臍帯巻絡のために臍帯循環が悪くなるために胎児心拍数が下がり、緊急帝王切開で分娩となることもあります。

単一臍帯動脈

へその緒には、通常、動脈2本と静脈1本の合計3本の血管が入っていますが、動脈が1本しかない胎児も多く見られます。18トリソミーなどの染色体異常に合併することもありますが、その他の異常がまったく見られない場合は予後良好なケースが多くあります。臍の緒は、生まれて切ってしまえば縁がなるものなので、生まれてからずっと心配する必要はありません。

臍帯辺縁付着・卵膜付着

へその緒が胎盤から出る位置が胎盤の端のほうだったり、胎盤でなく卵膜から出ているような場合には、赤ちゃんの成長がゆっくりになったり血流不全が起こることがあります。また卵膜付着の場合には下に書いている様な前置血管が合併していることも多く、きちんと診断しておく必要があります。

前置血管

子宮の入り口の近くの子宮の壁にへその緒につながる血管が走行しているとき、前置血管と呼びます。前置血管が起こりやすいのは、臍帯卵膜付着の場合です。時に胎盤の普通の位置から臍帯が出ている場合でも前置血管がおこる場合があります。前置血管は卵膜に臍帯につながる血管が這っている状態ですので、分娩時に卵膜が破れると(破水)、この血管も一緒に破れてしまって、赤ちゃんの血液がどんどん流出してしまい、赤ちゃんが亡くなってしまうか、命をなんとか取り止めても脳性麻痺などの重症な後遺症が残ります。前置血管に気づかれないまま普通に経腟分娩した場合、胎児の死亡率は50%以上にも及びます。一方で、出生前に前置血管と診断されていた症例では、生存率は97%にもなります。クリフムでは妊娠11-13週の初期ドックの時に臍帯の付着部位を確認し、卵膜付着の場合には前置血管の可能性があるかどうかもチェックしますが、最終的には18-20週の中期ドックで前置血管の有無を確認し、前置血管のエキスパートがいらっしゃる施設にご紹介しています。今までのところ、前置血管と診断した患者様でエキスパートに紹介した患者様はすべて元気な赤ちゃんを分娩されています。

前置血管タイプ1前置血管タイプ2

胎盤

前置胎盤

胎盤が正常より低い位置(膣に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部/全部を覆っている状態を前置胎盤といい、ほぼ100%が帝王切開分娩です。高齢妊娠、 喫煙者、多産婦、双胎、以前に子宮の手術を受けたなどが前置胎盤のリスクと言われています。また、前置胎盤のうちの5~10%が「癒着胎盤」であり、前置癒着胎盤と言われていて、子宮全摘出をしないといけなくなることが多いです。

前置胎盤

絨毛膜下血腫

妊娠初期によくみられる、子宮内の出血像です。妊娠初期に出血像が見られたからといって、予後(流産率)に違いはありません。自然に消失していくことが多いですが、何度も子宮内出血を繰り返す例では血腫に感染が起こったりして、中期の流産にいたることがあります。

胎盤内巨大血腫(ブルースモーレ)

胎盤内巨大血腫(ブルースモーレ)は胎盤の赤ちゃん側に生じる巨大血腫であり稀な疾患です。本疾患は胎盤内に巨大な血腫が生じ、胎児胎盤の循環が損なわれ、子宮内胎児発育不全や子宮内胎児死亡をきたす頻度が高く、胎児の予後が不良であることが多いとされている。